Shopify機能追加の戦略的な考え方
Shopifyを使っていると、機能を足すことへのハードルがとても低いと感じます。気になるアプリを見つけたら、入れて、少し試して、合わなければ外せばいい。その手軽さはShopifyの大きな魅力だと思う一方で、手軽であるぶん「なぜそれを足すのか」が置き去りになりやすい気もしています。
この記事では、Shopifyの機能追加についての私の経験や考え方をお伝えします。
Shopifyのアプリは、機能追加のハードルを大きく下げてくれた
以前、Shopifyではない国産ECカートの運用をしていた際に、MAツールを導入したことがあります。年間で数百万円規模の投資でした。結果として効果はあったので、無駄だったとは思っていません。
ただ、当時の感覚では、こうしたシステムは費用も準備期間もそれなりにかけて、覚悟を決めて入れるものでした。
それが、Shopifyでは、アプリストアに並ぶ膨大な数のアプリの中から、ボタン一つで試せます。なかには、無料期間が用意されているものもあります。以前なら導入検討に半年や1年がかりだったような機能を、まず触ってみてから判断できる。これは事業者にとって、本当にありがたい変化だと思います。
なので基本的には、気になるものはどんどん試して、合うものを使っていけばいいと考えています。ただ、その手軽さに乗ったまま走り続けると、あとから少し困ることもあります。
機能を追加する前に「一度立ち止まる」ことも必要だと思っています。
アプリを入れすぎて、現場で起きていたこと
これは他人事ではなく、私自身が運用の中で経験してきたことです。
気づけばランニングコストが膨らんでいた
アプリの多くは月額課金です。一つひとつを見ると、そこまで大きな金額ではありません。「これくらいなら試してみよう」と入れていくうちに、気づけばランニングコストがかなり高くなっていたことがありました。
厄介なのは、導入したときの判断はそれぞれ間違っていなかったように思えることです。一つずつ見れば理由がある。けれど全体として見たとき、その合計に見合う効果が出ているかと問われると、答えに詰まってしまう。そういう状態でした。
使っていないアプリが、速度や買い物体験に影響していた
もう一つは、使っていないアプリがそのまま残っていたケースです。
入れたまま使わなくなったアプリは、ページの読み込み速度に影響することがあります。また、ストアのデータへのアクセス権限を持ったまま残っていることになるので、セキュリティの面でも気持ちのいいものではありません。
なかでも印象に残っているのが、配送まわりの件です。配送系のアプリが複数入っていて、それぞれの入力チェック(バリデーション)が重なって効いていました。その結果、購入者が意図しないところで手続きが進みにくくなり、チェックアウト率に響いていました。
誰かが悪い判断をしたわけではなく、その都度の必要に応じて足していった結果、全体として意図しない買い物体験になっていた。売りたいはずの場面で、自分たちの仕組みが販売機会を逃していたことになります。
ちなみに、アプリはアンインストールすれば完全に消えるとは限りません。アプリによってはテーマにコードが残ったり、すでに発生している請求が次の請求書に載ったりすることもあるようです。入れるのは簡単ですが、外すときに少し手間がかかることがあります。
機能を足す前に「何のため・誰のため」を言葉にしておく
こうした経験を経て、機能を足す前に、まず目的を言葉にすることが重要だと改めて感じるようになりました。
目的はCVRか、客単価か、買い物体験か、運営の効率化か
「人気がある機能だから」「流行っているから」「効果がありそうだから」という理由で入れた機能は、あとから振り返っても、効いたのかどうかがよく分からないことが多い気がしています。
同じレビュー機能でも、CVRを上げたいのか、顧客に買い物を楽しんでもらいたいのかで、選ぶものや置く場所は変わってきます。運営の手間を減らしたいのであれば、そもそも顧客に見える機能である必要すらないかもしれません。何のために、誰のために入れるのか。そこが曖昧なまま導入すると、結局「なんとなく入れただけ」になってしまうことが多いと感じています。
入れたあと「何を見て効いたと判断するか」を先に決めておく
目的とあわせて考えておきたいのが、効果の判断基準です。
アプリによっては独自の分析画面があったり、GA4と連携できたりと、計測できることは意外と多くあります。ただ、何を見るかを決めないまま導入すると、数字はあるのに判断ができない、という状態になりがちです。どの指標がどう動けば「残す」、動かなければ「外す」。そこまでを導入前にざっくりとでも決めておくと、入れたあとに迷いにくくなるのかもしれません。
私が機能追加を検討するときの順番
では実際に、何かを足したいとなったとき、私はどう考えているか。いまはおおむね、次の順番で検討しています。
- 何が目的で、ゴールの指標は何か。本当に必要なのか?も含め検討
- どのように実装するか?(ネイティブ機能?テーマに機能ある?アプリ?コーディング?)
- テスト環境(開発ストア)にて検証
- 本番環境に実装
このうち2つ目の「どう実装するか」については、次のような順番で考えることが多いです。
まずはネイティブ機能やテーマの機能でまかなえないか
Shopifyにはもともと備わっている機能が多く、機能を足さずに運用の工夫でカバーできることも少なくありません。使っているテーマによっては、必要な機能がすでに用意されていることもあります。追加の費用がかからず、アプリ同士の干渉も起きにくいのが良いところです。一方で、できることには限りがありますし、そのぶん人の手が必要になる場面もあります。
メタフィールドやFlowで、もう一段工夫できないか
ネイティブ機能だけでは足りないとき、次に考えるのがメタフィールドやShopify Flowです。
たとえば、顧客にメタフィールドで情報を持たせて、Flowで条件に応じた処理を走らせ、メールを配信する。知恵を絞れば、追加の費用をかけずにできることは思っている以上に多いと感じます。
ただし、設計にはある程度の理解が必要で、仕組みを作った人しか分からない状態にならないよう、残し方には気をつけたいところです。
それでも足りなければアプリを検討する
ここで初めてアプリを検討します。アプリは導入が早く、専門的な機能をすぐに使えるのが強みです。その反面、ランニングコストがかかり、他のアプリやテーマの機能と干渉することもあります。
もう一つ見落としがちなのが、同じような機能のアプリが複数あることです。どれが自社に合うのかを比べて検証するのは、実はそれなりに時間がかかります。「すぐ入れられる」ことと「すぐ決められる」ことは、少し別の話なのだと思います。
継続コストを避けたいときは、コーディングという選択肢もある
最後がコーディングでの実装です。
例えば、予約販売の機能やブログに関連した機能を、コーディングで実装したことがあります。
コーディングは、必要な機能だけを必要な形で作れて、月額費用も発生しないのが利点です。ただ、初期の費用や時間はかかりますし、テーマを更新するときなどに保守が必要になることもあります。どちらが良いかは、その機能をどれくらいの期間、どれくらいの頻度で使うのかによって変わってくるのだと思います。
少しの手作業を残す、という判断
こうして順番に考えていくと、「そもそも自動化しなくていいのでは」という場面にも出会います。
たとえば、対象となる顧客や注文の数がそれほど多くないのに、どうしても自動化しようとしてしまうケースです。月に数件の対応のために仕組みを作り込んだり、アプリを入れたりするよりも、少しの手作業で済ませたほうが、結果的にコストも手間も小さいことがあります。
日々の仕事の中で自動化がしやすくなった一方で、それ自体が目的になりやすいものだとも感じています。すべてを自動で回したい気持ちは分かりますし、私もよく自動化の甘い罠にはまることがあります。
しかし、費用対効果を見たうえで、あえて手作業を少し残しておくのも、立派な設計の一つなのではないかと思っています。
足す前に、いま入っているものを見直すところから
Shopifyで機能を足せること自体は、とても良いことです。
試しやすさは、そのまま事業のスピードにもつながります。ただ、何のために足すのか、何を見て効果を判断するのかが抜け落ちると、コストや買い物体験の面で、少しずつ負債がたまっていくのかもしれません。
もし何か新しい機能を足そうと考えているなら、その前に一度、いま入っているアプリを「目的」と「指標」の観点で眺めてみるのも一つの方法だと思います。使っていないもの、目的が重なっているもの、手作業で十分なもの。意外と見つかることがあります。
私自身、何を足すべきかを整理するところから、ネイティブ機能やFlowを使った運用設計、必要であればコーディングでの実装まで、ご相談いただくことがあります。すべてをお任せいただく形でなくても、「このアプリ、本当に必要だろうか」という一つの問いから一緒に考えることもできます。立ち止まって考えたいときに、ご相談いただければと思います。
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